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高松地方裁判所 平成5年(ワ)204号 判決

主文

一、本件訴えを却下する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、請求の趣旨

1. 高松地方裁判所が同庁平成四年(ケ)第二号不動産競売事件につき作成した平成五年五月一三日付配当表のうち、被告に対する配当額を〇円と変更する。

2. 訴訟費用は被告の負担とする。

二、請求の趣旨に対する答弁

1. 原告の請求を棄却する。

2. 訴訟費用は原告の負担とする。

第二、当事者の主張

一、請求原因

1. 高松地方裁判所は、被告を債権者、原告を債務者として、別紙物件目録一及び二記載の各土地(以下「本件各土地」という。)につき、平成四年(ケ)第二号事件として任意競売手続を開始し(以下「本件担保権実行」という。)、その後不動産競売の結果、その売却代金につき、被告への配当額を二九五七万九八五六円とする平成五年五月一三日付配当表を作成した。

2. 原告は、右事件の配当期日である平成五年五月一三日、右配当表に異議を申立てた。

3. よって、原告は、右事件についての右配当表のうち、被告に対する配当額を〇円と変更することを求める。

二、被告の本案前の主張

本件担保権実行の申立当時において、その実行により競売された本件各土地は、訴外三好常三郎(以下「訴外常三郎」という。)の所有であった。

三、請求原因に対する認否

全て認める。

四、抗弁

1.(一) 被告は、原告に対し、平成元年一一月二七日、次の約定で一二〇〇万円を貸付けた。

弁済期 平成二年三月二六日

利息 年一割五分

利息支払期 毎月末日

損害金 年三割

(二) 訴外常三郎は、被告との間で、同日、本件各土地につき、被告を抵当権者、右貸金債権を被担保債権として、抵当権設定契約を締結した。

(三) 平成二年三月二六日が経過した。

2. 訴外常三郎は、被告との間で、平成二年四月一六日、本件各土地につき、被告を根抵当権者として、次の内容の根抵当権設定契約を締結した。

極度額 一二〇〇万円

債権の範囲 金銭消費貸借取引、手形割引取引、手形債権、小切手債権

債務者 原告

3.(一) 被告は、原告に対し、平成二年四月一六日、次の約定で二二〇万円を貸付けた。

弁済期 平成二年五月一五日

利息 年一割五分

損害金 年三割

(二) 平成二年五月一五日が経過した。

4.(一) 被告は、原告に対し、平成二年四月一七日、次の約定で二二〇万円を貸付けた。

弁済期 平成二年五月一六日

利息 年一割五分

損害金 年三割

(二) 平成二年五月一六日が経過した。

5.(一) 被告は、原告に対し、平成二年六月二三日、次の約定で一五〇万円を貸付けた。

弁済期 平成二年七月二二日

利息 年一割五分

損害金 年三割

(二) 平成二年七月二二日が経過した。

6.(一) 被告は、原告に対し、平成二年六月二三日、次の約定で一〇〇万円を貸付けた。

弁済期 平成二年七月二二日

利息 年一割五分

損害金 年三割

(二) 平成二年七月二二日が経過した。

理由

一、本件担保権実行により売却された本件各土地が、その実行に伴う差押えの時に訴外常三郎の所有であったことは、当裁判所に顕著な事実である。

二、1. 一般に、担保権の実行において、配当異議の申出ができる者は、その実行に伴う差押え時の物件所有者であり、その手続において債務者(民事執行規則一七〇条一号)と扱われる者であっても、所有者でない者(物上保証における被担保債権の債務者)は、配当異議の原告適格を有しないと解するのが正当である。

2. これを本件に則してみるに、本件担保権実行に伴う本件各土地差押え時における本件各土地の所有者は訴外常三郎であり、原告はその被担保債権の債務者であるから、原告は、本件訴えにつき原告適格を有しないものというべきである。

三、よって、本件訴えは不適法であるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

物件目録

一 綾歌郡綾南町大字陶字向原上四七九二番

山林

二〇〇五二平方メートル

二 綾歌郡綾南町大字陶字向原上四七九三番

山林

一三一九平方メートル

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